旦那に娘たちを託して入浴後、事件は起きた。
長女が、4日前に祖父母からプレゼントされたばかりの「アクアカールみさきちゃん」の髪を切ったと言うのだ。
「アクアカールみさきちゃん」とはリカちゃん人形の一種で、霧吹きで髪を湿らせカールすると簡単にソバージュや巻き髪を楽しめるのがウリである。そのためみさきちゃんは綺麗な金髪ロングヘアーをしている。
みさきちゃんの髪を切るということはすなわち、この人形最大の価値である「アクアカール」を放棄することに他ならない。
私は絶句した。
かなり前から娘がみさきちゃんを欲しがっていたのは知っていた。そして5歳の誕生日プレゼントとして満を持してやってきたのだ。
娘はたいそう喜び、片時も離さずに霧吹きしてはカールして、独自のヘアアレンジもして遊んでいた。なのに何故?何故もらってたった4日でそんなことをするのか…?
私は娘の行動を「ありえない、理解できない」と一蹴した。自分で買ったものではないけれど、祖父母の厚意を踏みにじったようなものじゃないか。だいたいこれ5000円もするんだぞ。普通のリカちゃんならともかく、よりによってみさきちゃんの髪を切るってどういうこと?!
フツフツと怒りが沸き起こる。もし旦那がその場にいなかったらブチ切れていたかもしれない。
聞くと断髪式は旦那の了承を得て行われていた。旦那曰く「おもちゃの改造」も経験と思ってとのこと。人形の髪は一度切るともう伸びないことは本人も理解した上で実行している。
確かにおもちゃの改造は創意工夫の経験として必要だとは思う。娘が好きなYouTubeでも、リカちゃんなどのおもちゃを粘土や絵の具を使って自己流にアレンジする動画を好んで見ている。その影響もあって、思い切った改造をすることに抵抗がないのかもしれない。。
みさきちゃんはもらった時点で娘の所有物だし、どう扱おうが娘の勝手ではある。でも、よりによって不可逆的な改造、一番の特徴である「アクアカール」を楽しめなくする行為を真っ先にやるのは如何なものか。。
すると、しょんぼりしていた娘が絞るような声でポツリと呟いた。
「キュアミルキーの髪型にしたかったの…」
切られたみさきちゃんを見ると、確かにミルキーくらいのセミロングになっている。
ああ、
そういうことだったのか…
娘なりに切りたい理由があったのだ。それなのに私は、ちゃんと耳を傾けようとしていなかった。
私から見るとみさきちゃんは「アクアカール」という機能が働いてこそ価値のあるものだと思っていた。だからその髪を切ることは「破壊・汚損行為」「モノを大切にしない」という認識だったのだと思う。
でも娘にとってはアクアカールに魅力を感じつつも、1体の人形を愛でていただけだったのだ。自分が髪を切ってイメチェンするように、みさきちゃんにもヘアカットを施したかっただけなのだろう。
今回は両者の価値観の違いによって引き起こされた事件だった。
私にとってはかなり衝撃的な行動に感じたけれど、そもそも人形の髪を切ってはならないというルールはないし、娘の所有物にとやかく言うことではなかったのかもしれない。
しかし本来の機能・価値を失わせる改変を容認することが必ずしも良いとは限らないのではないか、という疑問もある。この問題に正解はないのかもしれないが、コレクター性分の私としてはモヤモヤする。
ただ、切るなら切るでもうちょっと綺麗に切ればよかったのでは…w
まぁ、この長さならまだアクアカールできそう…かな…??
ちなみに、、
旦那曰く、「髪色も染めたい」と言っていたという…
…やめて。。