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1から読み返す「アルカナ・アルカディア」~15章「星はいずこに」~

以前このブログで綴っていたスタリラの「アルカナ・アルカディア」を読了させようシリーズだが、実はストーリー自体は2023年に最終回まで読了したのだった。

しかしブログの方はなんやかんや下書きのままズルズルと先延ばしにしてしまい、そうこうしているうちに先日スタリラのサービス終了が発表されてしまった。。

なので若干駆け足にはなるが、15〜18章の感想も随時まとめていく。今回は15章「星はいずこに」について。

▼前回

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15章「星はいずこに」

話数 主な出来事
1話 ・「アルカナ・アルカディア」第三幕(劇フェス第三回本読み)
・「太陽」いちえのアドリブに驚く一同。応じる「愚者」やちよ
・中断させようとする文を止める栞
2話 ・いちえのアドリブを褒めるB組、納得していない文
・「星」の配役はあえて空白にしている
・今の脚本に疑問を感じる晶とミチル
2.2話「悪魔」幕間 ・双葉の行動を余計なお世話と一蹴する香子
・自分だけのポジションゼロを目指そうと決意する双葉
・カプセルトイに撃沈するメイファンの前で一発で当たりをゲットする香子
2.5話「太陽」幕間 ・いちえラストライブの地、東京タワーでひかりと出会う
・失くしたものは取り戻せないけど、新しくやり直すことはできる
・いちえのアドリブが誰かに向けたメッセージと気づいていたひかり
2.7話「正義」幕間 ・なながバナナンシェの材料買い出し中、練習中の静羽を見かける
・静羽はかつて役に没頭して無茶をし、周りから人がいなくなっていた
・本気で演じるのを封印していた静羽を引っ張り出してくれたのはあるる。あるるを必ず連れ戻す
3話 ・バナナンシェを作るななとまひる、主役はいらないと言うななに異を唱える
・「死神」「戦車」「太陽」の演技を見て諦めたくないと思ったまひる
・総合芸術、皆で作る舞台を大事にしたいなな
4話 「屈折と均衡のレヴュー」まひるVSなな
・なな「皆で舞台を作れることが奇跡、主役が誰かは大切じゃない」
・まひる「嫉妬も劣等感も全部私が頑張るための燃料なの!」
5話 ・主役という言葉が皆を舞台に掻き立て狂わせる、だったら私が!→なな勝利
・ななはポジションゼロに立ってるのにキラめきが見えない
・皆を主役の呪縛から解放し、永遠の戯曲を壊すことを決意
6話 ・劇フェスリポートと題したいちえの配信
・ダメ出しコメントを寄せた文が現れアドリブを責める
・アドリブを楽しそうに演じていた、あれが本来の珠緒
7話 ・死神を無理して演じている、勝つことばかりで珠緒の良さが出てない
・珠緒に負担をかけて取り戻した舞台は塁やゆゆ子が憧れた凛明館の舞台なの?
・珠緒を駆り立て、取り戻したいものがあるのは文じゃないの?
8話 ・「妥協と信頼のレヴュー」いちえVS文
・私達が取り戻すのは過去じゃない、過去に囚われた文とは一緒に未来に進めない
・シークフェルトの舞台でやり残したことがあるんでしょ
9話 ・限界を迎えたえるの元に現れる「劇団A」ミチルと純那、タロットカードを見せる
・全力の芝居をする文を凛明館の舞台で見たい
・自分を受け入れてくれた凛明館と珠緒に恩返しがしたいだけ→文勝利
10話 ・(「アルカナ・アルカディア」第三幕?)
・都市に侵入した罪で裁判を受けている星の少女、99回目の再審開廷
・埒のあかない法廷、陪審員たちの無責任な会話に飽き飽きするフリーター少女
・旅は無駄、約束された理想郷「幸福都市」の一員になれという提案を断る星の少女
11話 ・歌手になって人を幸せにしたいフリーター少女の夢を嘲る市民
・例外を認めないことで平和と安全を守ってきたから星の少女の扱いに困っている
・罪は認めない、立ち止まって安心してしまっては私の心が死んでしまう
12話 ・フリーター少女に届いたメール「The Show Must Go On」
・星の少女の言葉に反応し、フリーター少女が叫ぶ
・こんな荒れた裁判知らない、と戸惑う裁判長
13話 ・職員が隠者と名乗り証人として参加表明
・旅は不要と言う裁判長に異を唱える隠者、解除コードで終わる舞台
・旅を再開する少女、月がないことに気づく
14話 ・「レヴュー・フロンティア」あるるVS美空
・何かを奪うくらいなら私の全部あげると言うあるるに美空が怒る
・私達を虜にした、私の人生を変えたあるるは罪深い
15話 ・あるるがいたから頑張れた、今度からはライバルとしてポジションゼロを目指す
・自分が本当のハッピーを知らないからハッピーな芝居ができてた
・話が書けなくなるえる
・静羽、ララフィン、つかさ登場

15章は5話まで/6話〜9話/10話〜13話/14話〜15話と区切れる。

「太陽」いちえのメッセージ

本読みシーン、「愚者」やちよが新たな旅に出ようとする場面。まひる・なな・クロディーヌ・珠緒、そしていちえ。道を照らしてくれ!と言う「愚者」やちよに対し、「太陽」いちえが咄嗟のアドリブで返す。驚く一同。

元の台詞とニュアンスは変えずに、かついちえの持ち前の明るさを前面に出した「太陽」像を展開。文が思わず止めに行こうとするも本読みは続行され、やちよもアドリブで応戦して好評を得るのだった。

新たな旅を始めることにした「愚者」やちよ

本読みはこれが最後で、皆の演技をもとに脚本を練り直すとのこと。この最後の本読みもフロンティアは全員欠席で心配する華恋たち。

幕間2.5話によると、アドリブは文へ向けたメッセージだと言う。見ていたひかりもこれに気づいていた。所属していたアイドルグループ「スイーツ・プリーツ」が解散させられた経験を経て、過去を引きずる凛明館ではなく新しい凛明館を作っていかなくちゃ!と語気を強める。

文へ向けたメッセージを込めていたいちえ

星の配役

目指すものの象徴となる「星」

この本読みの時点では「星」のアルカナの配役が空白になっている。雨宮の説明によると「星は皆が追い求めるものの象徴」として描くため、あえて配役はしていないという。

晶とミチルは現状の脚本に疑問を抱いていた。全員を立てると群像劇要素が強まり、戯曲を貫く軸がなく各章が散漫になるのではないか、そう思っているようだ。

これは「未知なる主役」をめぐって喰らい合うのと、皆で創る舞台に主役はいらないとする構図に繋がる気がした。

レヴュー

15章のレヴュー曲は「罪がないのならばそれが罪だ」。まひる、なな、いちえ、文の4人で歌唱。

屈折と均衡のレヴュー

3〜5話のレヴュー。2人で仲良くバナナンシェを作っていたが、ふとした会話から雲行きが怪しくなっていく。「もうその話はやめよう?」と戸惑うななに譲らず話を続けるまひる。

度々「主役の奪い合い」「皆で創る舞台」の対立構造を見かけたが、まひるVSななのレヴューはその象徴とも言える。特にあるるやななは孤独を経験したことから"皆で創る舞台"そのものに強い思い入れを抱くのもわかる。どちらの思想も一概に良し悪しで決められるものではないが、それぞれの思いがぶつかり合う姿は美しい。

「正義」と「隠者」にオーバーラップする

皆で切磋琢磨して舞台を作れることこそ奇跡であり、それに比べたら誰が主役かなど大切ではないと言い切るななに、「ひとりひとりの思いを『みんな』にしちゃうのは舞台少女への侮辱」「私が目指している場所を馬鹿にしないで!」とまひるが噛み付く。主役になれず何度も悔しい思いをしたまひるから見てななは役者も裏方もそつなくこなせる才能に恵まれているのに、主役を目指そうとしない姿に怒りをおぼえるのだろう。

このレヴューの前、ななは役作りのために自分を限界まで追い込む静羽に出会っていた。孤独だった自分を救ったあるるが今、舞台から下りてしまったことを静羽から聞いたななはあるるの気持ちに共感する。主役を目指すことで大切な「みんな」がいなくなることは、ななにとって許しがたいことなのだ。

あるるに共感するなな

「未知なる主役」を目指さないのならこの舞台から下りて!と叫ぶまひるの気迫。いつもの優しいまひるとは違う、主役という言葉が皆を狂わせるのなら私が…!と斬り伏せたなな。しかし、レヴューに勝ったのにななはキラめいてない…まひるはそう言い放つ。

負けても諦めないまひるの姿を見たななは「主役に囚われている皆を解放するために、永遠の戯曲を壊す」ことを決意してしまった。奇しくもその後、純那がえるにタロットカードを見せ、永遠の戯曲作りの手助けをすることになるのだが…

ななが決意してしまった

妥協と信頼のレヴュー

6〜9話のレヴュー。いちえが本読みでアドリブしまくったことに苦言を呈する文。しかしあのときアドリブに応戦した珠緒は楽しそうで、あれこそが本来の珠緒だと指摘するいちえ。

珠緒の芝居が窮屈になっていると指摘

2人ともわかっていた。凛明館演劇科再興のため、珠緒がシークフェルト的な厳しさを欲していることを。でも舞台の上の戦争に勝って、珠緒に負担をかけて取り戻した舞台は塁やゆゆ子が憧れた凛明館の舞台なの?といちえは問う。私達が取り戻すのは過去じゃない、新しい演劇科で新しい舞台を作っていかなきゃと説得するいちえ。

スイプリ解散経験者の言葉が重い

私の何がわかる!と反発する文だが、アイドル活動で人を見る目に長けているいちえにはお見通しであった。

「シークフェルトに未練たらたらで見てられないよ!」

シークフェルトの舞台でやり残したこと…口上の途中「"栞"を挟み」で言い淀んだ文。未練・後悔・執着から目を背けず受け入れ乗り越える、つまり過去を燃料にして再生産していかないと、たとえ演劇科復興を果たしたとしても文はずっと過去に囚われたままになってしまう。

いちえは文の舞台が見たい、過去の未練から開放された全力の芝居をする文を凛明館で見たいんだと必死に訴える。

文を説得するいちえ

「ヘリクツアイドル!」「世話焼きツンデレ!」って掛け合いがいちふみらしくて良いw

「太陽」のやるべきことはやった、珠緒のことは任せた!と文に託したいちえ。レヴューに勝ったのは文だが、実質的にはいちえが発破をかけた形となった。

「アルカナ・アルカディア」?

14章のときと同様、1話の本読みで「アルカナ・アルカディア 第三幕」と記載されるが、影絵スタイルの10話〜13話の方には記載がない。が、ここでは後者の内容に触れる。

後者が最終稿なのか?だとしても1話のくだりと10話のくだりは全くもって場面が変わっている。これは「太陽」いちえのアドリブが脚本に大きな影響を与えた結果なのだろうか?それともこれは戯曲【A】の方なのか?

第三幕

  • 隠者︰露崎まひる
  • 正義︰大場なな
  • 太陽︰音無いちえ
  • 節制︰夢大路文

裁判にかけられる星の少女

これまではなかった「少女」のシルエットがついた。絶対的安全に守られた「幸福都市」に部外者の少女が迷い込んで捕らえられ、裁判にかけられている。かれこれ99回も再審を繰り返しており、無作為に集められた陪審員の市民たちは飽き飽きしている。

バイトしながら歌手を目指して活動するフリーター少女もまた、この裁判の陪審員として呼ばれていた。繰り返される無意味なやりとり、無責任な他の市民たちに苛立ちつつも、法廷で沈黙を続ける。

留置所で少女に声をかける職員。謂れのない罪に問われようとも、少女には旅を続ける理由があった。

旅を続ける強い意思

100回目の再審。また同じやり取りが繰り返されるのだが、疑問を抱いたフリーター少女のもとに謎のメールが届く。

「The Show Must Go On」

いっそ幸福都市の一員になって罪を免れよという裁判長の提案も蹴り、未知への旅を続けたいと言う少女。その言葉に共感したフリーター少女は法廷から思いの丈をぶちまける。

さらには職員も証人として証言台に立ち、少女の罪を疑問視。荒れに荒れる法廷に戸惑う裁判長。隠者がリミッター解除すると、裁判長と検事は壊れたレコードのように同じ発言を繰り返す…そうして知性機械「裁判長」とコロスたちによって形成されていた偽りの法廷は幕を閉じるのだった。

明かされる隠者の正体

隠者はかつての戦争で生き残り、これ以上大切な人を失わないために外界から隔離した要塞「幸福都市」を築いた張本人だった。この戦争とは第二幕で起きた戦争を指すのだろうか?となると少女は時空を超えた旅をしている…?

時が経ち、街から人間がいなくなったあとも惰性で回っていた幸福都市だが、少女の言葉を聞いてそれを終わらせる決心がついた隠者。彼もまた新しい旅を始めるのだろう。

本読みの愚者の台詞にリンクしている気がする

この「幸福都市」という舞台設定、ななが皆で作る舞台を大切にするあまり"再演"を繰り返したTVアニメのことも彷彿とさせるというか…。未知への旅をする旅人を許さず、安心安全の守られた空間に閉じ込めようとする装置。「みんな」への執着が強いななと、過去の未練を引きずっている文にリンクしている。

レヴューに勝ったのはななと文だが、実質的にはまひるといちえに軍配が上がるような、そんな状況を反映するような第三幕だ。

劇団【A】

えるにタロットカードを見せる純那

いつの間にか、純那もミチルの劇団【A】に加わっていた*1。そしてキラめきを浴びすぎて処理オーバー気味になっているえるにタロットカードを見せる。

これによってえるがアルカナや正位置・逆位置のことを知り、これになぞらえた役を生み出すことは約束された。しかし、もっと教えて!と前のめりになっていたえるはすう…と寝てしまう。

寝てしまったえる

そういえばえるるとアンドリューがいるこの空間は現実世界のえるが見ている夢側の世界なんだっけ*2。彼女たちのレヴューを見ているえるは夢の中から見ているのか?あまりこのへんよくわかってないな…

レヴュー・フロンティア

こちらのレヴュー曲は「闇を照らすもの」。フロンティアの5人が歌う、珍しくシリアス調の楽曲。


美空とあるるのレヴュー・フロンティアが始まったが、あるるには全く戦意がない。もう舞台に立ちたくない、何かを奪うのなら私の全部あげる!というあるるに美空が怒る。

あるるの天性のスタァ性に魅せられた美空

あるるに本物のスタァがどんな存在なのか思い知らされ、自分もあるるのようにキラめきたい、主役になりたいと高みを目指すようになった美空。あるるは無自覚だが、あるるのキラめきが美空の人生を変えたのだ。

なぜほっといてくれないのかというあるるには、主役になりたい一方で舞台でキラめくあるるも見たいんだと伝える美空。しかし自分の「楽園」から皆が出ていった今、あるるにはもう舞台に立つ理由がなくなったと塞ぎこむ。

本当のハッピーを知らない

しかもあるるは、自分が本当のハッピーを知らないから、空っぽだから皆が期待するハッピーな芝居ができたのだと言う。これにはさすがにショックを受ける美空。自分が魅了されたあるるのキラめきが、本人によって否定されるなんて…

ショックを受ける美空

そこへ「迷子のドロシーをみつけてあげなくちゃ」と他の3人も登場。レヴュー・フロンティアは次章へ続く。

*1:ミチルにいきなり頼まれたと言うが、相当おかしいことを言ってるにも関わらず状況を理解し応じてくれたのはさすが純那って感じがする。

*2:11章「作劇、舞台少女」