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ヲタクなワーママのゆるゆる雑記ブログ

「輪るピングドラム」劇場版前編とTVシリーズとの違い

輪るピングドラム10周年を記念して制作された劇場版 「RE:cycle of the PENGUINDRUM」

内容としては基本的にTVシリーズの再構成だが、新規パートや新録セリフなどが追加されており、新鮮な気持ちで観ることができた。

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初見ではTV版との違いや新録台詞にほとんど気づけなかったのだが、後日レンタル配信が期間限定であったので前編を見返した。アマプラで公開されているTVシリーズと見比べながら、その違いについて気づいたところをまとめてみる。

劇場版前編のシーン比較

※全ての違いをみつけたわけではない
※新規パートについては簡素な描写にとどめている
※TV版と流れが同じところは1行にまとめている

序盤

シーン TVシリーズ 備考
実写の池袋 -
水族館で陽毬を見るちび冠葉晶馬
プリンチュペンギンの後を追いそらの孔分室へ
桃果登場「きっと何者かになれるお前たちに告げる」
ペンギン帽が消える
- 合間に1話Aの数カット
9話Aと類似するシーンあり
霊安室で陽毬が復活、頭にペンギン帽
戻ってきた日常
冷凍ペンギンが届く
1話B 帽子がずり落ちたあとのシーン割愛
「そして、僕たちの運命のベルが鳴る」 -
ペンギンたちが高倉家に馴染みだす
生存戦略バンク
ピングドラムを手に入れろと命じるプリクリ
冠葉から何かを抜き取る
1話B 「ROCK OVER JAPAN」新録バージョン
「荻野目苹果を探れ」 -
苹果の跡をつける冠葉晶馬
多蕗宅の軒下にいる苹果
2話B〜ラスト 細部カットあり
「運命は記されている」 -
牛乳を飲み干してもプリクリの存在を信じない冠葉晶馬
ペンギン帽がないと陽毬は生き延びれないことを思い知る
苹果宅に潜入する冠葉晶馬
3話A 細部カットあり

冒頭は完全に新規シーン。TVシリーズ最終話で運命の乗り換えをした後、どこかへ向かって歩いて行くちび冠葉・晶馬。あの2人が水族館にいるところから始まる。

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概ね1話BパートはほとんどTVシリーズ通りであるが、続く2話は大半がカットされている。まぁこの時点では苹果がヤバいって印象づけるところが肝だからね…w

反転している中央図書館

陽毬が水族館で倒れ、搬送先で心停止する1話Aパートのシーンがインサートされながら、2人はプリンチュペンギンのあとを追う。

エレベータで地下61階に降りた先の図書館で、2人の探している本がみつからない。やがて奥の部屋にある謎めいたドアを開けると「そらの孔分室」にたどり着く。

この一連の流れは9話Aパートで陽毬が「そらの孔分室」に迷い込んだときとほとんど同じである。ただ、TV版と見比べてみるとこの図書館の描写はなぜか全て左右反転していた。あと、返却口に書かれている今日の日付も「4月29日」と映画公開日になっている。

ROCK OVER JAPAN

そして「生存戦略ー!!」でおなじみのプリクリ登場バンクでは、曲が「ROCK OVER JAPAN -トリプルH featuring プリンチュペンギン-」という、プリンチュペンギンが参加したバージョンに変わっている。

TV版ではほぼ毎回このバンクが流れていたが、本作ではこの初回のみ流れた。大きなスクリーンで観るとやはり迫力があって良い。

CHAPTER01 荻野目苹果

シーン TVシリーズ 備考
CHAPTER01 荻野目苹果 -
カレーを作り、多蕗宅へ持っていく苹果
出迎えたゆりもカレーを作っており、隙をみて入れ替える
苹果・ドラ猫・陽毬・3号が入り乱れる
陽毬が苹果を家に招いていて驚く冠葉晶馬
3話A〜B 細部カット、一部順序入替あり
苹果はピングドラムを肌身離さず持っていると予想する冠葉晶馬
バードウォッチングに来た苹果・晶馬・多蕗・ゆり
苹果が池で溺れ晶馬に助け出される
4話A〜B 苹果ミュージカルほぼ全カット
幼い苹果が両親の夫婦喧嘩を見ている
幼い苹果が桃果の日記をみつける
6話B 苹果モノローグ追加
多蕗が苹果に桃果のことを語る回想カット
多蕗に渡すモンブランを買った苹果、パーラーにいた多蕗とゆりを見て踏み潰す
雨でずぶ濡れの苹果をみつける陽毬晶馬
5話A 苹果父との面会カット
カレー肉じゃがを食べる陽毬・晶馬・苹果
晶馬が運命日記を貸してくれと頼むも苹果に断られる
奈落から這い上がる苹果、プリクリの帽子をぶん投げる
5話B 大量のGカット
プリクリの罵詈雑言一部カット

ここからは主要キャラクターごとのチャプターという形で展開されていくため、多少話数の順序が入れ替わる。

苹果パートは3話〜5話が主要なところだが、4話に顕著に登場した苹果の妄想ミュージカルパートはほぼ全て*1カットされた。

消えた大量のG

5話Bパート、晶馬が運命日記を貸してほしいと頼み、苹果が拒む場面。このくだりは劇場版でもほぼこの通りだったのだが、TV版ではシリアスなシーンの裏でペンギン2号が大量のGにやられる場面が時々入っていた。さすがに大スクリーンであれだけの量のGを映すのはヤバいので、カットで正解だったと思うw

また、クリスタル・ワールドでプリクリが苹果に向かって言う「脳味噌ド腐れゲロ豚ビッチ娘」もカットされていたw

CHAPTER02 高倉冠葉

シーン TVシリーズ 備考
CHAPTER02 高倉冠葉 -
叔父にこの家を売らないかともちかけられる冠葉 5話A
電車内で組織の残党から金を受け取る冠葉 5話B
回想︰台風の夜に熱を出す陽毬、陽毬をおぶって行く剣山に冠葉もついてくる 5話アバン
トラックに引っかかったペンギン帽を自転車で追いかける冠葉、ずっこける 5話B BGMが新曲「YELLOW BLOOD」
回想︰冠葉をかばいガラスで負傷する剣山だが、冠葉とともに病院へ走る 5話B
トラックに引きずられながらもペンギン帽を離さない冠葉
回想︰病院で寝ている陽毬を見つめる冠葉と剣山
冠葉が傷だらけで帰宅、ペンギン帽をかぶせて陽毬復活
5話B 引きずられる時間短縮
BGMが新曲「ファクトリー」

冠葉パートの最大の見どころはやはりあの執念のペンギン帽奪還シーン。自転車疾走ののち、トラックに引きずられながら陽毬のためにペンギン帽を離さない。TV版と比べると、引きずられている時間はやや短くなっていた(それでも十分長く格闘しているように感じたが)。

映像的な流れはほぼ同じだが、ここでトリプルHの新曲「YELLOW BLOOD」「ファクトリー」が使われている。

CHAPTER03 高倉晶馬

シーン TVシリーズ 備考
CHAPTER03 高倉晶馬 -
苹果宅の引っ越しを手伝わされる晶馬 6話A 細部カットあり。苹果発熱や苹果母と晶馬が会話するくだりカット
自宅で歯磨きする多蕗 6話B
多蕗宅の軒下で話す苹果と晶馬 7話A
ゆりがパーティー会場で結婚報告
ケータリングのサンドイッチをつまみ食いする2号
7話A 新規テロップ「それは色欲のカサノバ」
カットインがTV版と異なる
タマホマレガエルを晶馬の背中の上で産卵させるが失敗 7話B 2号が卵を食った瞬間など、細部カットあり。
軒下で日記を見ながら悩む苹果
多蕗の寝込みを襲おうとするが既に多蕗はいない
7話B〜ラスト〜8話アバン 苹果ミュージカルはカット
引っ越しましたハガキ 8話A ハガキのアップのみ、それ以前のくだりはカット
多蕗の新居に訪れる苹果晶馬 8話B
回想︰電車内で苹果の持つプレゼントの中身が気になる晶馬 8話B TV版は回想ではない(順序が変わっている)
眠らせた多蕗にプロジェクトMを決行しようとする苹果
苹果と晶馬が言い争ううちに日記を落とす
日記の半分をバイクにひったくられ呆然とする苹果
晶馬が苹果を庇いトラックに撥ねられる
8話B〜ラスト 新規テロップ「妊娠=マタニティのM」
インターホンのゆり一部カット
晶馬モノローグ「僕は"運命"って言葉が嫌いだ。…」 1話アバン

晶馬パートは苹果の「プロジェクトM」に翻弄される6〜8話が中心となっている。

ゆりの結婚報告シーンでは、間に挟まるカットが苹果晶馬から2号の悪戯(サンドイッチを中途半端に食べては戻す)に変わっていた*2

睡眠薬を使ったプロジェクトMは失敗し、苹果と晶馬が言い争う。このシリアスなくだりはTV版そのままだが、晶馬が撥ねられたあとに1話アバンの晶馬モノローグが入ってきた。

中盤

シーン TVシリーズ 備考
実写の荻窪 -
そらの孔分室、桃果が何かに気づく
ピングフォースステッカーが飛んでくる
-

TV版では8話ラストで晶馬が撥ねられ、続く9話ではいったん話題が変わって陽毬の過去譚となる。

劇場版では晶馬モノローグののち、実写パートへと移る。荻窪の風景とキャラクターとの融合が良い。

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そして舞台は再びそらの孔分室へ。僕は死んじゃうのかと心配するちび晶馬。

そのとき、赤い目の何かに気づいた桃果に変化が起き、ピングフォースステッカーがプリンチュペンギンめがけて飛んでくる。

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CHAPTER04 夏芽真砂子

シーン TVシリーズ 備考
回想︰阿佐美ら元カノたちが冠葉を呼びつける 4話A〜B 細部カットあり
真砂子と連絡をとる阿佐美
エスカレーターで何者かに突き落とされる
4話ラスト 日記読み上げカット
冠葉が見舞いに行くが、阿佐美は記憶を失くしている 6話A 真砂子が撃つシーン(5話A)はカット
他の元カノ達に問いただす冠葉、その目の前で彼女らも襲われる 6話A 撃たれた後の会話カット
冠葉の肖像画を描く真砂子 11話A 台詞が全く異なる。絵を描くシーン以外カット
CHAPTER04 夏芽真砂子 -
晶馬の見舞いに来た苹果
晶馬が真砂子に誘拐される
晶馬を取り戻すべく冠葉が地下へ向かう(大音量「新世界より」)
10話A〜B 冠葉陽毬のお見舞い全カット
水銀体温計食って死んでる2号カット
ほか細部カットあり
冠葉にキスする真砂子 10話B 晶馬をみつけるシーンカット
苹果、晶馬を救うために日記の半分を落とす 10話B 落とした以降のシーンカット
電車内で独りごちる真砂子 10話ラスト 台詞が異なる(11話Aの台詞の一部)
マリオは登場しない

真砂子パートは10話の内容が中心で、それまでにあった元カノ襲撃などもここにまとまっている。

エリマキトカゲみたいな冠葉の肖像画を描きながら「私の名前は夏芽真砂子」と言う台詞はおそらく新録だろうか?11話Aで同じ絵を描く場面はあるが、台詞が全く異なっていた。

苹果が晶馬のお見舞いに来たシーン。TV版ではこの前に冠葉と陽毬がお見舞いに来ているが全カットされている。その後のラウンジでのやりとり(手編みのセーターなんて云々*3)もカット。

また、TV版では2号が寝ながら水銀体温計を食っており、苹果との会話の横で死んでる光景が映るが、そのくだりでは始めから2号がベッドから消えていた。

晶馬誘拐騒ぎで日記の半分を入手した真砂子は「こんな形で16年前の呪いが実現するとはね」と電車内で呟いているが、この電車シーンはTV版では台詞が異なっている(一部新録か??)。「こんな形で…」は11話Aの夏芽邸での台詞だった。また、ペンギン帽を被ったマリオは登場しないので、その場面もカットされている。

CHAPTER05 高倉陽毬

シーン TVシリーズ 備考
陽毬がTVで歌うダブルHを見ている 9話B
回想︰オーディション応募の際、陽毬がユニット名「トリプルH」を考案 9話A
CHAPTER05 高倉陽毬 -
回想︰姿見を倒した陽毬を庇い千江美が負傷
回想︰学校で鯉の生き血を取ろうとして失敗
回想︰陽毬が最後に学校へ行った日
TVのダブルHを見ている陽毬
9話A〜B 眞悧と陽毬の会話全カット
職員室で庇いあうシーンカット
ちび冠葉晶馬の台詞追加

陽毬パートは9話の「そらの孔分室」で眞悧が陽毬に見せる本の中身である。劇場版では眞悧との会話は全てカットされ、陽毬の回想部分のみが繋げられている。

鯉の生き血のくだり、職員室に呼び出された3人が互いに互いを庇いあうシーンが丸々なくなっているので、帰り道の陽毬の「2人とも大好きだよ」が若干唐突にも感じてしまう。

最後の学校シーンのあと、TV版では眞悧と陽毬の会話になるが、そこがちび冠葉晶馬の新しい台詞に変わっている。

終盤

シーン TVシリーズ 備考
そらの孔分室、桃果がいない
喋りだすプリンチュペンギン
本棚の本にピングフォースステッカーが貼り付く
-
電車内の晶馬と苹果
ヒメホマレガエルから作った秘薬で多蕗が苹果に惚れる
チャンス到来するも断る苹果、豹変する多蕗
迎えに来た晶馬陽毬、苹果が晶馬に八つ当たり
電車内に95マーク、「君の運命を狂わせたのは僕たちだ」
11話A〜B〜ラスト〜12話A 細部カットあり
95マークになる前の状態が異なる
回想︰出生報告を聞いた剣山、計画を実行「これで世界はピースされる」
ビルから立ちのぼる黒煙、桃果の葬儀
「奴を止めろ…」と言って倒れるプリクリ
12話A 多蕗少年のシーンカット
退屈すぎて寝ちゃうプリクリカット
冠葉に謎の着信「高倉陽毬は今夜死ぬ」 12話A 眞悧の台詞短め
回想︰お代官様ごっこをしながらロールキャベツを作る陽毬 12話B
冠葉モノローグ
寝ている陽毬にキス
1話ラスト ここ一部カットされてた気がする(不確か)
病院に駆けつける冠葉
電池切れしたプリクリに蠍の魂を差し出す冠葉
12話B 晶馬の「メリーさんの羊」全カット
プリクリと冠葉の台詞異なる(新録)
クライマックスから「DEAR FUTURE」
ダイジェスト 1話〜10話など
幼い陽毬晶馬の潮干狩りを見つめる冠葉 -
ダイジェスト 9話、21話など
流れ星が降る中、水辺に佇む冠葉。陽毬を見つめる -
蠍の魂を返すプリクリ、陽毬心停止
絶叫する冠葉の前に眞悧登場
12話B〜ラスト 眞悧が苹果の前を横切らない
「だよね」の間が少し開いてる気がする
エンドロール「ノルニル」 -

プリンチュペンギンが豹変しだして、物語も佳境へ。11話と12話はほぼそのままの流れに近いが、晶馬が日記を手放した苹果を責めるくだりなどいくつかカットされたシーンもある。

電車内に95マークが張り巡らされるシーンの直前も少し異なっていた。TV版ではクリスタル・ワールドから転移するが、劇場版では電車内にいる状態からそのまま様相が変わる。

1話アバンの晶馬モノローグもだが、1話ラストの冠葉モノローグがこのタイミングに来るのもなかなか良かった。

冠葉の新規台詞

病院に駆けつけた冠葉がプリクリに蠍の魂を差し出そうとする12話のクライマックス。ここは冠葉・プリクリともに台詞回しや声のトーンに違いがあり、どうやらシーンごと新録のようだ。冠葉の台詞はTV版より少なめだが、その分熱い情念が台詞の一言一言にこもっている。

また、TV版ではこの流れで晶馬のモノローグ「メリーさんの羊」が語られていくが、そこは丸々カットされていた。冠葉のプリクリのやりとり、固唾を飲んで見守る苹果と晶馬の場面に限定されている。

そして「DEAR FUTURE」で始まる陽毬ダイジェストは、これまでに出てきた場面だけでなく、カットされたシーンや13話以降のシーンからも引用があった。

そして、この新規シーンである…

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「ずっと好きだった」と冠葉が陽毬への想いを募らせる新規台詞も良かった。

ところでラストのラスト、眞悧登場のくだりで「だよね」の間隔が多少違うような…同時再生してみると、劇場版の方が1拍遅い気がした。

まとめ

というわけで、以上が輪るピングドラム劇場版前編のTV版との違いである。思いのほか長くなってしまった。。

こうしてみると重要なエッセンスはきちんと抑えながら、TV版のストーリーを再構成しているんだなぁと感心する。

*1:最後の救助後のところのみ

*2:サンドイッチの悪戯シーン自体はTV版にもあるが、挟まるタイミングがほんの少し繰り上がっている。

*3:ここで冠葉が迷惑だと言う「妙に手の込んでる弁当」「馬鹿でかいケーキ」「名前入り手編みセーター」が、人質晶馬を助けに行く道中でこれでもかと言わんばかりに出てくるのが面白い。