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別れの悲劇に私は"エルドラド"されてしまった︰スタリラ朗読劇「遙かなるエルドラド」感想

12月16日に開催された「少女☆歌劇レヴュースタァライト -Re LIVE- Reading Theatre 第四弾『遙かなるエルドラド』」を観た。

想像とは大きく異なるドロドロとした愛憎劇で驚いたが、とても面白くズシンと響いた。

少女☆歌劇レヴュースタァライト -Re LIVE- Reading Theatre 第四弾「遙かなるエルドラド」

revuestarlight.com

開催概要

開催期間2023年12月16日 14:00/18:00
2023年12月17日 13:00/17:00
場所飛行船シアター
チケットS席 9900円/A席 7500円
配信︰各3500円/4公演通し券 10000円
脚本江嵜大兄
演出江嵜大兄
出演者
(敬称略)
小山百代 富田麻帆 岩田陽葵 相羽あいな 飛龍つかさ
楽器演奏︰furani 菅野太雅 中村哲也
感想ハッシュタグネタバレ有︰#朗読劇エルドラド
ネタバレ無︰#スタリラ朗読劇

朗読劇70分、アフタートーク25分、休憩なし。

空飛ぶんだよな、サルバトーレが!!

「遙かなるエルドラド」は劇場版スタァライトにおける劇中劇である。序盤の進路相談シーンにインサートする形で、純那と華恋がこの劇の稽古をする。ここではサルバトーレを純那、アレハンドロを華恋が演じていた。

なぜ…なぜ…なぜ…征ってしまうのか、友よ…

自主退学したひかりを憂う気持ちとシンクロするように、アレハンドロ華恋の熱演が光る。

しかし映画ではここに至るまでの経緯が不明*1だったため、今回の朗読劇でようやくストーリーの全容がわかることとなる。

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また、「遙かなるエルドラド」は新国立第一歌劇団の十八番公演であることが電車内のシーンで語られる。ここで双葉が言う「空飛ぶんだよな、サルバトーレが!!」という台詞は後にネタ化し、なんと今回の公式グッズにもなってしまったw

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そして、現在制作中のスタァライト初のコンソールゲームも「遙かなるエルドラド」が題材となっている。こちらは現時点でティザーサイトしかなく、発売日も未定*2。キービジュアルを見る限り、配役も朗読劇バージョンとは一部異なるようだ。

revuestarlight.bushiroadgames.com

会場・座席について

素敵なフラスタが

今回も飛行船シアターでの上演。エントランスには数々のフラスタが飾られていた。

座席は1階席中央左端、目の前は通路で左隣2席は撮影用カメラが設置されていた*3

ステージは船を正面から見たような感じのセットが組まれており、時折さざ波の音が聞こえていた。

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スタリラ朗読劇(12月16日夜公演)の感想

※ここからネタバレ注意!

※千秋楽公演の配信も見ているので、合わせた形の感想となる。

低音ボイスがたまらない

これまでの朗読劇は「キャラクターたちによる開演前後のやりとり」も冒頭や最後に入るものが多かった。しかし今作は開演前後ともに声のみ*4のやりとりで、キャストが舞台に上がっている間は最後まで「キャラクターが演じる役」になっており、まひる以外の男性役4人は終始低音ボイスなのだ。

特に華恋と真矢は子供時代・少年時代・青年時代と3タイプの男性声を出すのですごく耳が幸せだった。(もよちゃんの低音イケボ大好きマン)

わちゃわちゃした影ナレの後に始まった朗読劇は開幕早々緊迫した状況。船は大荒れで水夫たちが絶叫する中、狼狽えるアレハンドロがあの台詞を言い、一気にグッと引き込まれる。ここに至るまでに何があったのか、いよいよ我々に明かされる時が来たのだ。

想像以上に重いストーリー

劇スを観た段階では、サルバトーレが飽くなき探究心から友を置いてでも"遙かなるエルドラド"を目指して旅立とうとするシーンなのかと思っていた。「大航海ロマン」というフレーズにも「冒険活劇」といった爽やかなイメージを抱いていたのだ。

しかし、件のシーンはもっともっと複雑でドロドロで深刻な状況だった。「空飛ぶんだよな〜!」なんて無邪気にはしゃげるものではなかったのだ。。

子供時代に仲良くなり、共にエルドラドを目指す夢を誓いあった2人。しかしアレハンドロが知らないところで父による少年たちへの性加害が行われ続けており、穢されたサルバトーレは復讐のときをしたたかに待ち続けていた…という構図。あのシーンはサルバトーレの復讐が成就し、アレハンドロから船を奪って逃げる場面での台詞だったのだ…

公演終了後に渡された来場者特典「雨宮詩音の第一稿」

来場者、及び配信の通し券購入者のみに配られる「『遙かなるエルドラド』第一幕 雨宮詩音の第一稿」には、まさにあのシーンまでの脚本が書かれている。今回の朗読劇とは台詞回しが少し変わっていたり、丸々描かれなかったシーンなどもあり、舞台版ならきっとこうなんだろうなぁという書き方になっていた。

キャバレロ卿周りのシーンはト書きに直接的な表現も書かれていて、活字で見ると尚更エグい。キャバレロ卿のことはふせったーにも色々書いた。

fusetter.com

てかさ…こんなエグい脚本を書ける高校生ヤバくない?w

なんかすごくキャラ相関図を描きたいので、描けたらここ↓に載せようと思う。

(相関図載せる…かも?)

"スタァライト"を彷彿とさせる場面

エルドラドには"スタァライト"みを感じさせる要素が散りばめられているように感じた。

アレハンドロの台詞に「『今は』*5だよ!」があったり、サルバトーレの台詞に「君はあまりにも美しく、眩しく、愚かだ…*6」があったりと、聞き覚えのある台詞がちらほら。「きらめき」「奪い合う」といったフレーズも出てくる。

父・友・船・地位、そして妹まで失い絶望したアレハンドロがコロンブスに焚き付けられ、奪われたものを取り戻す決意をしたときの台詞はまるでレヴューの口上のようである。ここの迫力も凄かった。

もう失うものは何もない。戻る場所もない。

全てを失くしたこの身の奥に、魂焦がす怒りをみつけた!

我が名は復讐者アレハンドロ!

サルバトーレ・グーリエ!君に追いつき、奪い、復讐する!

皆が追い求めるもの*7、という意味でも"エルドラド"と"スタァライト"の類似性を感じる。どちらも「別れの悲劇」であるし、幼い華恋とひかりが戯曲スタァライトを見て目を焼かれたように、我々も本作を見ることで目を焼かれた気がした。まるで追体験をしたような気分だった。

兼役の演じ分けがすごい

キャスト メイン その他
愛城華恋 ・アレハンドロ なし
天堂真矢 ・サルバトーレ ・水夫
西條クロディーヌ ・ミゲル
・キャバレロ卿
・水夫
・悪ガキ
露崎まひる ・カルメンシータ
・イサベル
・水夫
・悪ガキ
ジュディ・ナイトレー ・ズルフィカール
・コロンブス
・水夫
・パブロ
・審議官

華恋以外は兼役である。5人で実にたくさんの役を演じている。

ミゲルとキャバレロ卿なんて被害者と加害者という真逆の役どころ。あいあいさんはそんな2人を巧みに演じ分けていた。キャバレロ卿のときに不気味なオレンジの照明が当たるのもゾクッとした。あとミゲルとサルバトーレが会話するシーンはどれも好き(語彙力)。

暗殺者ズルフィカールと探検家コロンブスもまた毛色の違う役だけれど、飛龍つかささんは声優初参加と思えぬほどのどっしりとした演技で魅了された。さすが元男役スター…。ズルフィカールが登場するときのザラリとした闇を引きずってくるような感覚、すごく良かった。

唯一女性役を演じたはるちゃん。どちらもサルバトーレに想いを寄せる。彼のために健気に料理の腕を磨くカルメンシータも可愛いし、許嫁がおり叶わぬ恋と知りながらも彼に惹かれていくイサベルもまたせつない。何より凄まじかったのはそんなカルメンシータが、父の淫蕩を知り壊れていく場面。絶望に打ちひしがれ、兄の目の前で自害するくだりは息を呑んだ。

サルバトーレを演じたまほ姉、いやもうホント色々見どころはたくさんあって書ききれないんだけど、すごく良かった(語彙力)。アレハンドロと互いの指輪を交換して誓ったあのとき、キャバレロ卿の黒い噂を知りながら後見人の誘いを受けた覚悟といったら…。終盤の「奪い奪われ奪い合う、それが人間だ!」という台詞もしびれた。

そしてアレハンドロもよちゃん、低音大好き(また言う)。無垢さ故の残酷さというか、とはいえ友が父に辱められていたなんて思いもしないもんな…。。何も知らなかったアレハンドロは船乗りたちの復讐により父を殺され、できたての船を奪われ、父の淫蕩が明るみになり地位も失い、妹にまで死なれてしまい…と踏んだり蹴ったり(そのあとイサベルにも裏切られるし)。復讐に立ち上がるところの迫力も凄かったが、それでもなおサルバトーレを憎みきれないでいる揺れる演技も良かった。

歴史は苦手だが少し興味出た

登場人物のうち、イサベル王女とコロンブスは実在の人物である。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

2人のWikipediaから主な出来事を抜き出してみる。

  • 1470 イサベル誕生
  • 1474 母イサベル1世カスティーリャ女王即位
  • 1479 イスパニア王国誕生
  • 1482 グラナダ侵攻開始
  • 1486 グラナダの西半分制圧/コロンブスが女王らに謁見
  • 1490 イサベル、ポルトガル公アフォンソと結婚
  • 1492 グラナダ陥落(レコンキスタ完遂)

「雨宮詩音の第一稿」によると本作は1486年という時代設定となっており、まさにこの史実と合致する。歴史苦手*8な私でも当時の時代背景など調べたくなってきたので、こういう史実に絡めた形のフィクションというのもなかなか面白いと思った。

まとめ

朗読劇「遙かなるエルドラド」はとても面白かった。第二幕以降の脚本も見てみたいし、なんなら舞台で上演してほしい。脚本にしかなかったシーンも見てみたいのだ。

あと音楽も相変わらず素晴らしく、物語を盛り上げてくれた。千秋楽アフトで知ったのだが、実は4公演それぞれ異なるバージョンで演奏する箇所があるとのこと。こだわりが凄い。

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*1:寮で真矢が広げている雑誌には「遙かなるエルドラド」の大まかなあらすじが書かれているが、しっかりとは読んでなくてよく知らなかった。。
文字起こし参考︰note.com

*2:2023年7月の発表では「2023年冬」と言っていたがどうやら延びているっぽい。年明けに続報来るか。

*3:この左端2列は元々販売されてないようで空席だった。

*4:ここのジュディの話し方が、日本語を母国語としない人って感じが出ていてよかった。

*5:劇スの純那の台詞「でも、今は、よ」

*6:劇ス「狩りのレヴュー」のななの台詞、「君は美しかった。愚かで熱く、美しかった。(略)…眩しかった、純那ちゃんが!」

*7:スタァライトにおける「星」や「塔」のような。ただ、「エルドラド」は本当にあるかどうかもわからぬ場所ではあるが…

*8:高校で世界史選択だったくせにこの辺ちんぷんかんぷんだった