ついに観てきた「ロスメルスホルム」。会話の応酬で繰り広げられる人間模様。なかなかに難解で観終わったあとはどっと疲れた。
「ロスメルスホルム」
開催概要
開催期間 | 愛知公演︰2023年10月28日〜10月29日(全2公演) 福岡公演︰2023年11月3日〜11月5日(全3公演) 兵庫公演︰2023年11月10日〜11月12日(全4公演) 東京公演︰2023年11月15日~11月26日(全15公演) |
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場所 | 愛知公演︰穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール 福岡公演︰キャナルシティ劇場 兵庫公演︰兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 東京公演︰新国立劇場 小劇場 |
チケット | 愛知公演︰S席10000円/A席7000円 福岡公演︰S席11000円/A席9000円 兵庫公演︰11000円 東京公演︰12000円 |
配信 | 11/26 13:00公演(千秋楽) 4500円 |
脚本 | 原作︰ヘンリック・イプセン 脚色︰ダンカン・マクミラン |
演出 | 栗山民也 |
出演者 (敬称略) | 森田 剛 三浦 透子 浅野 雅博 谷田 歩 櫻井 章喜 梅沢 昌代 |
ノルウェーの劇作家イプセンの最高傑作とも呼ばれる舞台。愛知・福岡・兵庫・東京の4地域で上演された。
東京千秋楽公演は配信もある。剛くん主演舞台の配信はおそらくこれが初めてではなかろうか。すぐさまチケットを購入しておいた。
インタビュー記事が続々
公式インタビューのみならず、各種メディアによるインタビュー記事が断続的に投下されていった。こぞってビジュアルが良すぎる…。
9/1 ぴあ
9/7 T Japan
9/8-9 precious.jp
9/15 GOODA
11/4 産経新聞
ドトール初台北口店
公式Xで案内を見かけたのでお昼がてら立ち寄ってみた。剛くんのメンカラ・赤のストローを上演記念にもらえる。ホットドリンクでもOKとのこと。
この店舗の過去ポストを見るとわかるが、新国立劇場の出演者にちなんだカラーストローを用意しているようで、時期によっては珍しい紫や黄色のストローを提供することもあるようだ。配慮がすごい。
また、レシートにも21日から「応援コメント」なるものが記載されるそうだが、19日観劇時点では小劇場の公演情報が印字されていた。
東京公演の会場・座席・物販について
新宿のお隣、初台駅を出てすぐのところにある新国立劇場。この一帯は東京オペラシティと呼ばれる複合文化施設で、存在は知っていた*3ものの訪れるのは初めてであった。
オペラ劇場・中劇場・小劇場を構える館内は広く、衣装展示などギャラリーが充実していた。本作は地下にある小劇場で上演された。
物販は現金のみ対応で、
- パンフレット
- ロスメルスホルムの白い馬レザーキーリング(ホワイト/ブルー)
- ステージセットライブフォト
の3種グッズがあった。中でも白い馬キーリングはなぜかとても人気があり、ブルーに至っては開場5分で完売。どうやら毎公演そんな感じでブルーからすぐなくなるらしい。
原作未読で来たので、なぜ白い馬なのか*4も全然わからずにいた。とりあえずパンフレットだけ…と思ったのだが、ここには戯曲「ロスメルスホルム」を丸々収録した雑誌「悲劇喜劇」が売られていたので、観劇後の復習のつもりでそちらも購入した。
小劇場はちょっと大きめの映画館くらいのこじんまりさ。後方席だったが視界に難はなかった。しかし3時間座りっぱなしだとかなり尻が痛くなった。。
「ロスメルスホルム」(11月19日昼公演)の感想
twitter.com#ロスメルスホルム 東京公演5日目
— 舞台「ロスメルスホルム」公式 (@rosmersholm2023) 2023年11月19日
本日は13時公演に加えて、18時から追加公演もございます。
1人でも多くの方にご覧いただきたく、若干数ですか当日券もご用意しています。開演の45分前から販売です。
(現金のみの対応となります。)
皆様のご来場、お待ちしています! pic.twitter.com/17bNwSomnr
基本的にこの部屋*5、ロスメルスホルムの屋敷内で物語は繰り広げられる。
左側の壁にはロスメル家歴代当主の肖像画がびっしりと掲げられており、なかなかの威圧感を感じながら過ごしていることがうかがえる。
絵画的な光の演出
部屋の行き来は少ないものの、光の差し込み方は様々あって面白かった。基本的にステージは薄暗く、ドアや窓が開いて差し込んだ光が光源のメインとなる。朝・昼・夕方など時間の変化も感じとれた。
時々窓を開けて橋の方を見やるシーンがあるが、その姿はさながら絵画のようにも見えた。部屋の暗さと外の明るさが対照的に感じられた。
twitter.com#ロスメルスホルム
— 舞台「ロスメルスホルム」公式 (@rosmersholm2023) 2023年11月22日
本日もできる限りたくさんの方にご覧いただくため、昼公演 夜公演ともに当日券をご用意いたしました!
昼公演は13:00開演、夜公演は18:30開演です。
開場時間(開演の45分前)より、当日券受付窓口にて販売いたします。#新国立劇場 にて
皆さまのご来場をお待ちしております! pic.twitter.com/DlHX4jsNXu
ド初見はキツいので戯曲予習がおすすめ
前回観た舞台「みんな我が子」も怒涛の会話劇だったが、今回の「ロスメルスホルム」もまぁかなり台詞が多くて長い。
レベッカとヘルセットとの会話から始まり、やがてクロルやロスメルも加わっていく。パンフレットで登場人物の相関図には目を通していたものの、会話の中から登場人物の思想なり人柄なりを把握して「今どういう状況なのか」を常に考えながら観ようとするととても疲れる。
ネタバレを避けようと原作未読で挑んだのはあまりよくなかった。どんな物語なのかを知るため一言も聞き漏らすまいと会話を聞くことに集中してしまい、あまり俯瞰した見方ができなかった。屋敷内の会話にとどまり大きな場面転換はしないので、ともすれば第1幕は眠気との戦いでもあった*6。
予め戯曲を読んでいれば、ここのシーンは舞台でこんな演出になるのか!といった発見もできただろうに、ド初見では物語に追いつくので精一杯だった。これから観に行く人は戯曲を先に読んでおくことをお薦めする。
で、どっちなんだい!?
第1幕で様々張ってきた伏線が、第2幕で回収していく感じなのはわかった気もするが、とにかく話が難しい。登場人物の発言がそもそも本音とは限らず、皆それぞれに鬱屈としたものを感じるのだ。まあそういう複雑なものこそが人間なのだろうが…
前半は異なる政治思想の対立構造が見えつつも、後半に進むにつれ同志であるはずのロスメルとレベッカの関係性がぐらつき、やがて大きな感情の発露を見ることとなる。お互いがお互いを同じ志をもつ清い関係だと言うが、実際この時点まではそうだったのかもしれないが、でも結局のところ異性として意識してる瞬間はお互いあったわけで。すれ違いながら、言葉をこねくり回しながら、「もうどっちなんだよ!じれったい!!」とイライラして見ていた。
そしてあのラストへもつれ込む……鑑賞後なんともいえない無力感と虚無感に囚われ、スタオベすらも忘れてしまった。
そもそもロスメルスホルムの同居人としてレベッカは異質な存在に映る。ロスメルの亡き妻ベアーテの兄クロルがレベッカをここへ引き入れたとされるが、なんで使用人でも家族でもない異性を夫婦の中に投じた?そんなん波乱が起きるに決まってるだろう。。
そんなモヤモヤを抱えたまま退出。帰宅後「悲劇喜劇」の戯曲を90分で読み返し、聞き取れてなかった台詞などを補うことができた。やはりこれは先に読んでおくべきだったな…と後悔。
まとめ
正直どの登場人物にも共感できないのだが、複雑に絡み合う人間模様、戯曲を読み返した今なら多少は解像度が上がった気がする。
幸いなことに千秋楽配信がある。もう一度あの舞台を観たらまた、違った感想を抱くかもしれない。
(追記)現地で見たあと戯曲を読み、千秋楽配信を少なくとも通しで2回繰り返し見てやっとスッと入ってくるようになった気がする。家系に囚われもがくヨハネス、内に秘めた生々しい欲望を吐露するレベッカ、ラストのくだりになだれ込むまでの熱演がすごかった。配役されてないベアーテも、彼女の苦しみが伝わってくるようだった。