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デマがもたらす悲劇︰「ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~」感想

ミナト町純情オセロ

久々の新感線舞台、「ミナト町純情オセロ」を観た。デマに惑わされた末の二人の悲劇がせつなかった。

2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespeare 「ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜」

開催概要(東京公演)

開催期間2023年3月10日~2023年3月28日(全21公演)
場所東京建物Brillia HALL
チケットS席14000円/A席11000円
ヤングチケット(22歳以下)2200円
青木豪
原作︰ウイリアム・シェイクスピア(松岡和子翻訳版「オセロー」)
演出いのうえひでのり
出演者
(敬称略)
三宅 健
松井玲奈 粟根まこと 寺西拓人

右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ
礒野慎吾 中谷さとみ 保坂エマ 村木 仁 川原正嗣 武田浩二

藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 下島一成
岸波紗世子 髙橋優香 工藤頌子 毛利アンナ可奈子

高田聖子

東京公演のあと、4月13日〜5月1日まで大阪公演がある。

上演時間は休憩込で3時間40分。しかし体感はあっという間だった。

  • 第一幕︰1時間30分
  • 休憩︰20分
  • 第二幕︰1時間50分

健くんmeets新感線

劇団☆新感線といえば剛くんが初舞台を踏んだ「荒神〜AraJinn」「IZO」があるが、健くんが新感線の舞台に出るのはこれが初めて。

しかも関西弁を話すヤクザという、これまでにない役どころ。健くんの新境地を開く舞台となりそうだ。

spice.eplus.jp

ところがその後、健くんは5月2日(大阪千秋楽の翌日)にジャニーズ事務所を退所することが発表*1された。つまりこれが、退所前最後の舞台出演ということになる。

12年ぶりの再演

2011年に橋本じゅん・石原さとみ主演で上演された「港町純情オセロ」の再演作品。シェイクスピアの「オセロー」を、日本の港町を舞台に翻案したところは共通している。

note.com

↑これを読んでから健くん=鶏そばのイメージになってしまった(笑)

ただ、パンフレットによると今作は「再演」ではなく「改訂版」と位置づけているようだ。確かに、港町〜とは登場人物が一部異なる。原作のイアゴーに当たる人物が女性(アイ子)になっているのも大きな違いである。

会場・座席について

向かい側の公園はあんスタのイベントで賑わっていた

会場はハレザ池袋にある東京建物Brillia HALL。つい先月もスタァライトの舞台でここに来たばかりだ。

www.yururito.net

スタァライトでは3階席の手すりに視界を遮られる事態が起きたが、今回は1階席だったためそれほど困ることはなかった。1列前の人の頭が被ったがギリギリ許容範囲内だった。。

会場内物販は入場すぐのところ以外にも、パンフレットだけ販売しているコーナーがありスムーズに購入できた。パンフレットのサイズはかなり大きめだが、ビニール袋入りで渡されるのでありがたい。

今回は3時間以上の長丁場。話にのめり込んではいたものの、終盤はさすがに尻が痛かった。。

「ミナト町純情オセロ〜月がとっても慕情篇〜」(3月19日公演)の感想

会場に向かう際、原作「オセロー」のあらすじをWikipediaで、本公演のあらすじを公式サイトでざっと読んでおいた。ああこれは最後に2人とも死んでしまうんだ、それを念頭に置きながら心して観た。

「IZO」以来の新感線。開演前に流れるヘビメタ曲、ああ新感線の舞台観にきたんだなぁって実感w

愚かしくも愛おしいオセロ

負傷して手当を受けた町医者の娘・モナに惚れたことからカタギになることを決意したオセロ。沙鴎組の二代目組長候補として期待されている身の上だが、その座を汐見に譲りモナと結婚することを表明する。

モナの必死の説得もあり、強敵だったモナの父や先代組長の妻アイ子にもなんとか了承してもらったが、全てうまく行って2人きりになった瞬間のはっちゃけぶりが絵に書いたようなバカップルだったw何この可愛いヤクザはww

髭にパーマというワイルドな風貌のオセロ。観音組を潰しにかかるところはとてもカッコいいのに、モナの前ではデレデレ。そのギャップが面白かった。

その分、二幕からの「モナが汐見と浮気しているのではないか?」という根も葉もないデマにじわじわと支配され、嫉妬に燃えモナを殺してしまうオセロが辛くもあり愚かしくも感じた。あんなに愛していたのに、モナを信じることができなかったオセロ…刺し殺さず締め殺したのはせめてもの温情か…。

しかし、観客にはそれがデマだとわかっているのでオセロが愚かに見えるだけなのかもしれない。実際、このようにわずかな疑念とそれっぽい事象を結びつけたデマを流布されたとき、果たしてそれに騙されずデマだと一蹴できるだろうか?自分がオセロだったらモナを信じ続けられるだろうか?と、他人事じゃない恐ろしさを感じた。

アイ子姐さんに圧倒された

本作のMVPは高田聖子さん演じるアイ子だったと思う。やっぱ悪役が素晴らしいと舞台が面白い。悪役ムーブだけじゃなくて観客に語りかけるような独白もよかった。

三ノ宮を騙して利用したり、エミを唆して岩塩を盗ませたり、汐見をモナに近づけるよう仕向けたりとあちらこちらで暗躍しつつ、姐さんと慕うオセロには味方のふりをして接し続けるしたたかさ。デマを吹き込む際も、これは不確かな情報だとか勘違いかもしれないから気にするな、とかオセロにあえて忠告しながら不安を植え付けるやり方が怖すぎた。

モナの死後、エミが岩塩の真相について洗いざらい告白したことでアイ子の悪事が明るみに。ここでしっかりと処罰が決まるのは意外だった。あのボンテージに身を包み、数々の処刑をしてきた赤穂組組長婦人・樹里絵が言うもんだから怖いのなんのって…目以外斬り落として達磨にするって発想もヤバいが、その通告に全く動じないアイ子のふてぶてしさもヤバかった。

デマに翻弄される者たち

今作は「デマによってもたらされる悲劇」が描かれている。

状況は違えどオセロもアイ子もデマによって父親を殺されている。またエミも、根も葉もないデマに苦しめられた経験がある。

デマのせいで大切な人を失った者同士が、片や巧妙なデマを作り上げて相手を貶め、片やそのデマに踊らされて大切な人を手にかけてしまう。なんともやるせない。

しかしアイ子がオセロを嵌めるきっかけとなった「オセロが庇ったのは組長ではないかも?」という兄貴の発言も真偽不明なものであり、アイ子自身もデマに踊らされてここまで来てしまったのかと思うと救いがなくて辛い。中盤でアイ子が歌う「テネシーワルツ」がせつなかった。

その他箇条書き

  • 健くんの関西弁何も違和感なかった(※関東人の感想)
  • 市議会議員の三ノ宮、アイ子にまんまと乗せられてそこまでやる?って行動力に笑ったw三ノ宮先生の変装スキルすごくない?w
  • 汐見の投げキッス、なんじゃこりゃと思ってたらアイ子姐さんがツッコんでて笑ったw
  • 飲むと暴力的になるからと酒を遠慮してたのに、箍が外れて飲みまくってしまう汐見が面白かった。
  • 嫉妬に狂うオセロ、汐見と密会するモナのセリフを妄想して暴走wしまいには「ちん…」って言いかけたところで卒倒してるしw
  • チエとエミとモナがバルコニーで歌うシーン、ああもうこれフラグだ…と思いながら聞いてたからせつない。
  • モナ絞殺シーンもオセロ自害シーンも辛い…でも重なり合う2人は絵画のようだった。てかモナ死んでからラストまでずっと微動だにしない松井玲奈さんすげー!
  • オセロの血が服に着いた状態で終幕し、カテコで現れるまでに早着替えしてるの?すご!
  • 樹里絵が後半からラストまで連れ回してた「犬」がとても気になったw役名も犬村っていうのねw
  • カテコ、何度かやって最後はスタオベ。そのとき最後の最後でオセロ健くんが治安の悪い投げキッスしてたw

まとめ

ここまでとりとめのない感想を書いたが、1回しか観劇できてないので、結構記憶から抜け落ちてしまった部分もある。願わくばもう1回くらいは観たかった。

デマに踊らされてしまう恐ろしさは現代のネット社会にも通じる話題である。オセロのような悲劇をもたらさぬよう、自分の目で真偽を見極めることが大切だなと思った。

*1:2/20 16:57の文春砲で大騒ぎになり、同日深夜に公式発表。この日は剛くんの誕生日でありトニコンツアー中。健くんのことなので、本来の発表予定日はもう少しあとのつもりだったのではないかと思う。。