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劇薬のような映画だった︰「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」感想(ネタバレあり)

ランダム色紙は双葉

劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」を観た。

そして私は、見事なまでにスタァライトされてしまった。

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どこからどう話せばいいのかわからない。

けど、この衝撃にも近い気持ちを早く書き残さねばと思った。色褪せぬうちに、そして色々な人の感想を見漁ってしまう前に。

※ちなみに私は"少女☆歌劇 レヴュースタァライト"を全て履修しているわけではない。よって多少解釈が足りない部分もあると思うが、そこはおいおい補うつもりでいるので今回はご容赦いただきたい。

媒体 履修度合
舞台 未鑑賞。ただし配信で青嵐は見たことある。
漫画 未読。
TVアニメ 全12話視聴済み。少なくとも全話2周はしてる。
ゲーム メインストーリー読了済み。執筆時点での最新話はアルカナ・アルカディア#15「星はいずこに」9話。
映画 ロロロは未鑑賞。今作が初

まずは事前に公開されていた冒頭シーンから。


うむ、なるほどわからん。

しかしこれこそスタァライトだ、という謎の安心感さえあったりで。

「トマト」の意味するもの

キリンのマニマニマニマニ間に合わないいい!!がインパクトありすぎるんだが、血飛沫のように飛散するトマトもこれまた強烈なインパクトを残す。

トマトはこの後も度々出てくる重要なモチーフだが、このトマトが何の隠喩なのか、観終わったあともぐるぐる考えていた。

そして私は「(舞台少女としての)命・血肉」のようなものではないかと思った。特にひかりが華恋にトマトを手渡すところは「輪るピングドラム」における"ピングドラム"に近いものを感じた。

野菜で構成されたキリン*1(画的に結構グロ)も、あれはキリン="観客"の存在が"舞台少女"の燃料となることの比喩だったから、トマトもそういう舞台少女を滾らせるものなのではないかな…となんとなく。

あと、こうグシャっと潰れるトマトは間接的に血を表現する「血糊」のようなものとして使っていくのかなと冒頭を観て思った。

が、直接的な血の表現が派手にあったことに、この後の私は衝撃を受けるのだった。

「皆殺しのレヴュー」

ロロロを観てないので比較はできないが、少なくともTVアニメにおいては血の表現はほんの少しだったように思う。それが「皆殺しのレヴュー」では容赦なく血が流れる。

TVアニメ版から時は進み最終学年、華恋以外は卒業後の進路を描いていて、新国立第一歌劇団の見学に電車で向かう…という日常パートの最中になながぶっ込んできた「皆殺しのレヴュー」は、開幕早々胸を鷲掴みにされた気分だった。二刀流*2、普段と違う低音ボイス、舞台映えする長身…TVアニメ7話でも感じたがななのこういう立ち回りゾクゾクする。

「なんだか、強いお酒を飲んだみたい…」

ひとしきり暴れたあとそう呟くなな。きょとんとする一同にまた同じことを言う。まるで次の"台詞"を待っているかのように。

意図がわからずマジレスする純那。突然首から噴き出す血飛沫がエグい。

しかしそこに真矢の「狼狽えるな!舞台装置の演出だ!」が飛んできてはたと気づく。そうか、これは既に"舞台"なのか…。しかし素なのか演技なのか、血か血糊か、現実と虚構、日常と舞台の境目がわからなくなる感じ、スタァライトの好きなところ

これまでの華恋

物語の随所に挟まる華恋の回想。TVアニメでは、幼い華恋がひかりと観た舞台に魅了されたことなどが描かれたが、本作では華恋のこれまでがさらに細かく語られる。

意外にも幼少期は引っ込み思案だった華恋が、ひかりと出会ったことで心を開き、舞台に魅せられ、小学生で劇団の主演を務め、やがて聖翔を受験する―東京タワーでひかりと交わした約束を胸に、華恋が舞台少女へと変貌していくさまがとても丁寧に語られていた。

当たり前といえば当たり前だが、聖翔に入る前は普通の保育園や小学校、中学校に通っていたわけで、聖翔以外のコミュニティに属する華恋を見れたのは新鮮だった。中学時代の仲良しグループには男子も半数混じっていて、男女分け隔てなく好かれていた普通の少女としての一面も感じた。

そんな華恋は、ただ一人進路希望が空欄になっていた。稽古では後輩たちを圧倒する芝居をしつつも、ひかりと「スタァライト」を演じる約束を果たし、さらにひかりが学園を去ってしまったことで心にぽっかり穴が空いてしまったのだろうか。

ワイルドスクリーンバロック

そんな華恋の回想を挟みながら、それぞれの舞台少女はケリをつけていく。

皆殺しのレヴューで「ワイルドスクリーンバロック開幕」とキリンは言う。なんだそれ??*3

てか画面の表記が「スクリーーン」と長音長めにとってるのは何か意味があるんだろうか。あと「ワ(イ)ルド」とか「wi(l)d」とか括弧書き表記も見たが、これも意図的なものなのだろうか?*4わからない。。

双葉・香子「怨みのレヴュー」

TVアニメの「約束のレヴュー」からさらにパワーアップして、博打やらデコトラやらキャバレーやらやりたい放題wふたかお劇場、いいぞもっとやれ。平たく言うと夫婦の痴話喧嘩なんだけど、どうにもこうにもいじらしい2人。

新国立第一歌劇団受験をなぜ双葉1人で決めたんだって迫る香子。いやもう香子こそ千華流継ぐって決めたじゃんよwと内心ツッコミ。まぁ香子もオーディションに固執していたわけだけども…

わがまま放題の香子をこれまで甲斐甲斐しく世話してきたのは紛れもなく双葉なわけで、今度は私のわがままも聞いてくれよ…と静かに上掛けの紐を切るさまは尊い…

しかし双葉はほんと努力家だよなぁ。クロディーヌにこっそり特訓してもらったり、無謀だとわかっていながら新国立を目標にしたりとひたむきに自分を高めようとしてる。でもそれは香子の隣に立つに相応しい自分になるためってのがもう…

まひる・ひかり「競演のレヴュー」

まひるの闇再び。今度は野球にとどまらず競技場でオリンピックやっちゃったよwミスターホワイトとスズダルキャットw

華恋との「嫉妬のレヴュー」は狂気を感じつつどこかせつないものだったけど、このレビューは中盤で貴女がずっと大嫌いだった…とひかりにネチネチするまひるがもうホント良い…あのサイケデリックなエレベーターの使い方といい、どうして演じないのとひかりに迫るまひるの圧がたまらん。そう、これまひるは"演じている"んだな…結構本音に近い感じはするけれどもw

でもこのレビューを経て、ひかりは舞台に立つ準備が整ったと解釈すればいいのかな。さっきまでのドロドロが嘘のように、最後は晴れ晴れとしていた。まひるがひかりを送り出す、その姿は頼もしささえ感じた。

純那・なな「狩りのレヴュー」

じゅんなな、そういえばこうしてレヴューするのは初めてか。

「孤独のレヴュー」「絆のレヴュー」などなな関連のレヴュー結構好きだけど、この「狩りのレヴュー」もどちゃくそに凄い。凄すぎる。私の語彙力ではとうてい語り尽くせないけど、なんとか頑張って書いてみる。

「皆殺しのレヴュー」で特に派手にやられた純那。舞台に立てていなかった、"舞台少女"として死んでいたことを示唆するものだが、「今はまだ」「いつか」という半ば諦めにも似たことを口走る純那に、自決しろと言わんばかりに三方に載った刀をななが足で差し出す。このくだり、衝撃が強すぎて思考回路がショート寸前だったのでもう一度ちゃんと観たい。。あと「ガオ」もね。どこを切り取っても名シーンだ…。

純那が唱える数々の先人の言葉をバッサリ切り裂くなな。ついには弓の翡翠も砕かれ、純那はもう勝ち目がないのか…と思われたが、ここからの逆転劇が凄かった!「殺してみせろよ、大場なな!」の口上も然り。自決用に差し出されたななの刀で純那がななを制すと、それぞれに照らされた「次の舞台」へ向かってゆっくり別々に歩いていく。逆方向に向かって歩いているのは各々の行く先、NYとイギリスを表していたのかな…なんてエンドロールを観ながら思った。

序盤のななが言う「泣いちゃった」と、終盤の純那が言う「泣いちゃった」がすごく綺麗な対比になっている。TVアニメでも思ったけどじゅんなな尊い…(語彙力の喪失

真矢・クロディーヌ「魂のレヴュー」

皆殺しの衝撃、ふたかおの激アツ痴話喧嘩、まひるの狂気、じゅんななの凄さときて真矢クロである。

この時点でとっくに私の「尊いメーター」は振り切っていたのだが、真矢クロがさらに追い打ちをかけてきた。半端ない。

そろそろ語彙力が足りなくなってきた…この主席・次席コンビもバチバチしてて良いよねほんと…。クロが真矢を一方的にライバル視してるだけでなく、真矢も真矢でクロを求めているのがなんとも尊い。圧倒的王者として君臨している真矢を「奈落で見上げろ私がスタァだ!」と荒げるほどに揺さぶったのはクロだからこそなせる技なのかなぁと思う。

そして今回のレヴュー曲に「奢りと誇り」に似たメロディラインが入っているのがアツい。早くサントラ聞きたい!

「最後のセリフ」

いよいよ舞台が整った。華恋の人生を変えるきっかけとなったひかりの手紙が、舞台装置としてバックにある。

しかしそこで華恋は我々観客の存在に気づくと、その恐怖からかひかりの目の前で突然死んでしまう。さすがに狼狽えるひかり。

何が起きた…?とこちらもハラハラしたが、そこからの「再生産」が凄かった。文字で説明してもなんのこっちゃだし私にはそこまで文筆がないので詳細説明は割愛するが、華恋の再生産シーンはすごくロックだったと思う。「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」でウテナが突如車になって爆走の末にお城カーから外の世界へ脱出したときのような、目の前で起きていることはワケワカメなんだけどなんか感動する、ああいう感覚を久々に感じた

いつも酷使されがちな東京タワー、今回もまた酷使されてたけど、ポジション・ゼロも結構頑張ったよね。棺桶的な使い方があったとは。

再生産した華恋がひかりからトマトを受け取り、新たな舞台を求め進み出すラストは清々しかった。まさに「愛城華恋は、次の舞台へ!」

その他印象的だったこと

  • 電車が変形してレヴュー服がぞろりと揃うシーンは滾った。そういえば劇フェスの車内広告、スタリラの4校が並んでいた。
  • 決起集会のシーンもすごくよかった。B組の雨宮・眞井コンビがフィーチャーされるとは!演じる方も大変だけど、脚本を作る方もそりゃもう大変。重圧に押しつぶされそうになりながら、B組も戦ってるんだよなぁとあらためて思い知るいいシーンだった。
  • 華恋が聖翔を受ける決意を固めたそばには青嵐の入学案内も。併願しようとしてたのか?
  • エンドロールで判明するみんなの進路について↓

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これまんま皆の進路を示してたんだな…エモいなこのイラスト…

序盤の面談から進路を変えた者は純那となな。純那はNY留学へ、ななはひかりと同じイギリスの王立演劇学院へ…物理的に離れていても2人の絆は堅い。わかります。

てか皆、国内外の名門校にストレートで受かってるのマジ凄すぎる…。

そして本当に卒業なんだな…九九組…

余韻激しく

とりとめのない長い文章になってしまったが、以上が「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」を初見で観た感想である。

観終わった直後も、帰宅してからも、その夜も、また次の日も、頭の中がスタァライト一色だった。

そして、なるべく早いうちにもう一度映画館で観たいと思った。円盤まで待てないし、やっぱりあれは大きなスクリーンで観るのが最高だ。砂漠で水を飲んでもすぐ喉がカラカラになるような、渇望する気持ちが強い。

実に劇薬のような映画だった。

ロロロを観てからだとまた違った感想を抱くかもしれないと思ったので、今度はロロロを履修しようと思う(宣言)。

*1:アルチンボルドの絵みたいなあれ

*2:しかも初手は一本刀で斬り始め、あとからもう一本電車で運ばれてくるの何あれ!!カッコよすぎか!!

*3:ググったら「ワイドスクリーン・バロック」がヒットした。ワイルド+ワイドスクリーン・バロックなのだろうか?

*4:「皆殺しのレヴュー」のレヴュー曲「wi(l)d-screen baroque」はwideからのもじりである意味のように感じる。が、特報の「ワ(イ)ルド」は「イ」ではなく「ル」が括弧書きになっていて謎。